
音の前に、静寂がある
空虚ではない。音楽がまだ響く前から、そこに在る静けさ。ここにある楽器はすべて、まずその静寂に耳を澄ますことから始まる。調和は、形となる以前にすでに在る。
生きている系譜
静寂は、深く聴かれ、責任をもって受け渡されることで初めて存続する。幾世紀にもわたり、作り手たちは知っていた。その聴く在り方が、後に「傑作」と呼ばれる楽器を生んだ。名前が、静寂に取って代わる以前のことだった。私たちは形をなぞらない。その聴き方を、継いでいる。

「古人の跡を求めず、古人の求めたる所を求めよ」― 松尾芭蕉(17世紀)

音が形となるとき
可視となった調和から、楽器は立ち上がる。音楽、比率、そして人の身体に導かれ、音が意味をもってこの世界に現れ、そして消えた後にも何かを残す、そのために
一挺に至る道
楽器は、音楽的な生きた声の延長である製作依頼は、個人的な儀式。意図と、これから生まれてくる音楽とを、静かに重ね合わせていく過程
私的な対話
音楽的な意図を語ることから、旅は始まる
音の意図を定める
その楽器が担うべき意味を明確にする
木材と調和の選定
ビジョンに即した素材と比率を選ぶ
製作期間
数か月にわたる、集中と献身の時間
初音の儀式
楽器が音として息を始める瞬間

深く聴く音楽家のために
私たち音楽家は、生涯にわたり音楽に寄り添う。調和、幾何学、そして意図。楽器は、”聴く”ことから生まれる。これが、私たちの在り方である。